吠えるには、理由があります。しつけの前に、ひとつ見落としがちなのが「毎日の食べ物」。食事と犬の行動の研究、人の添加物と多動の研究を、できることとできないことを分けて、正直に書きました。
この記事の要点
- 犬が吠えるには、理由があります。「無駄吠え」という吠え方は、犬の側にはありません。
- 食べ物で吠えが止まる、とは言えません。研究でも「多動」は食事で変わりませんでした。
- ただし、食事の中身が犬の攻撃性に関わるという研究(JAVMA 2000)、人工着色料と保存料が子どもの多動に関わるという研究(Lancet 2007)は実在します。
- だから、しつけの前に、ひとつだけ。パッケージの裏を見てください。
「うちの子、無駄吠えがひどくて」
よく聞く言葉です。
でも、私は「無駄吠え」という言葉が、少し苦手です。
犬は、無駄には吠えません。
吠えるには、犬なりの理由があります。
私たちに、それが分からないだけです。
この記事では、吠える理由と、見落とされがちな「食べ物」の話を書きます。
できることと、できないことを、分けて書きます。
犬は、なぜ吠えるのか?
吠える理由は、だいたい決まっています。
- 警戒:インターホン、外の足音、知らない人。「来たぞ」と知らせている。
- 要求:ご飯、散歩、かまって。吠えたら叶った経験が、吠えを強くする。
- 不安・分離:留守番、飼い主が見えない。
- 興奮:遊び、来客、散歩前。
- 退屈:エネルギーが余っている。
- 痛み・体の不調:吠え方が急に変わったときは、ここを疑う。
どれも「無駄」ではありません。
犬からすれば、全部、意味のある声です。
だから、吠えを減らしたいなら、まず「どの理由か」を見る。
これは、しつけの本にも、獣医師の説明にも、必ず書いてあることです。
では、食べ物は関係あるのか?
ここからが、この記事の本題です。
結論から言います。
「食べ物を変えれば吠えなくなる」とは、言えません。
そう書いているサイトもあります。でも、私は書けません。
理由は、下の研究を読むと分かります。
研究1:食事のタンパク質とトリプトファンが、犬の攻撃性に関わった(JAVMA 2000)
アメリカの獣医学会誌(Journal of the American Veterinary Medical Association, 2000年, DeNapoliら)に、こんな研究があります。
行動に問題のある犬33頭を、「支配性攻撃」「縄張り攻撃」「多動」の3グループに分け、タンパク質の量(高・低)と、トリプトファン(必須アミノ酸のひとつ)の有無を変えた4種類の食事を、1週間ずつ順番に与えました。
結果は、こうでした。
- 支配性攻撃:高タンパクでトリプトファンなしの食事で、いちばん攻撃スコアが高かった。
- 縄張り攻撃:低タンパクにトリプトファンを足すと、スコアが下がった。
- 多動:食事では、変わらなかった。
つまり、食事が犬の行動に関わる、という結果は出ています。
でも、「多動」は変わらなかった。
吠えそのものを調べた研究でもありません。
だから「食事で吠えが治る」とは書けない。
正直に、そう書きます。
研究2:人工着色料と保存料が、子どもの多動に関わった(Lancet 2007)
これは、人の研究です。犬の研究ではありません。
イギリス・サウサンプトン大学の研究(The Lancet, 2007年, McCannら)で、3歳と8〜9歳の子どもに、6種類の人工着色料と保存料(安息香酸ナトリウム)を混ぜた飲み物を与えたところ、多動の傾向が増えました。
この結果を受けて、EUでは2010年から、この6種類の着色料を使った食品に、こんな表示が義務になりました。
「子どもの活動と注意に悪影響を与えるおそれがあります」
お菓子の袋に、です。
繰り返しますが、人の研究です。
犬で同じことが起きる、と言える資料を、私は持っていません。
ただ、こう思うのです。
人の子どもで「落ち着きがなくなる」と言われて、警告表示まで付いた成分が、犬のおやつに入っていたとしたら。
そのおやつを、毎日あげていたとしたら。
吠えの原因だ、とは言いません。
でも、「関係ないと言い切れるか」と聞かれたら、私は言い切れません。
研究3:腸と行動(PeerJ 2019)
もうひとつ。オレゴン州立大学の研究(PeerJ, 2019年, Kirchoffら)では、同じ環境で飼われていた犬31頭を調べ、他の犬に攻撃的な犬と、そうでない犬で、腸内細菌の構成が違っていました。
これは「腸が原因」と言える研究ではありません。著者自身が「原因と結果は分けられない」と書いています。
ただ、腸と行動がつながっている、という見方は、人でも犬でも、研究が増えています。
腸を作るのは、毎日の食べ物です。
ここまでを、正直にまとめると
分かっていること。
- 食事の中身は、犬の行動(少なくとも攻撃性)に関わる。
- 人工着色料と保存料は、人の子どもの多動に関わり、EUでは警告表示の対象になっている。
- 腸内環境と行動には、関係がありそうだ。
分かっていないこと。
- 食事を変えると、犬の吠えが減るのか。これを直接調べた研究を、私は知りません。
だから、この記事は「食べ物で無駄吠えが治る」とは言いません。
言えるのは、ひとつだけです。
吠える犬を、しつけだけで何とかしようとする前に。
その子の体を、毎日何で作っているか、一度だけ見てほしい。
パッケージの裏を、見てください
犬は、自分で食べ物を選べません。
袋の裏も、読めません。
出されたものを、全部、食べます。
おやつの裏を見てください。
着色料。香料。保存料。甘味料。
人間の子どもには「注意してね」と言われる成分が、犬のおやつには、当たり前のように入っています。
犬用だから、表示の警告もありません。
吠えの原因は、たぶん、別にあります。
警戒か、要求か、不安か、退屈か。
それは、ちゃんと向き合ってあげてください。
でも、その犬の体を、イライラしやすい材料で作っていないか。
それだけは、今日、袋の裏を見れば分かります。
しつけは、時間がかかる。
袋の裏を見るのは、1分で終わる。
だから、まず、そこから。
【ここからは宣伝です】
ドッグダイナーは、犬と猫の健康食品を作っている会社です。
着色料・香料・保存料・甘味料を、使いません。
使わない理由は、上に書いたとおりです。
「うちの商品で吠えが止まります」とは、言いません。言えません。
ただ、原材料は全部、袋の裏に書いてあります。
読んで、納得してから、選んでください。
最後に
「無駄吠え」という言葉を、私は使いたくありません。
吠えているのは、何かを伝えようとしているからです。
その声を「無駄」と呼んでしまうと、理由を探すのをやめてしまう。
理由を探す。
体を作っているものを、見る。
どちらも、小さな一歩です。
でも、その一歩は、1km先で1mの違いになる。
私たちは、本気でそう思っています。
よくある質問
Q. 食事を変えれば、無駄吠えは治りますか?
A. 治る、とは言えません。食事が犬の攻撃性に関わるという研究はありますが、多動は食事で変わらず、吠えそのものを調べた研究も見つかっていません。吠えの理由(警戒・要求・不安・退屈・体調)を先に見てください。
Q. 低タンパクの食事にすれば落ち着きますか?
A. 研究では、低タンパク+トリプトファンで縄張り攻撃のスコアが下がりました。ただし、成長期の子犬や妊娠・授乳中の犬に低タンパク食を与えるのは勧められていません。食事を変えるときは、獣医師に相談してください。
Q. 人工着色料は犬に悪いのですか?
A. 子どもの多動との関連を示した研究(Lancet 2007)は人の研究で、犬で同じ結果が出ている資料は、当社では確認できていません。ただ、犬のおやつに使う必要があるか、という問いは別です。着色料は、犬のためではなく、人の目のために入っています。
Q. 急に吠えるようになりました。
A. 吠え方が急に変わったときは、痛みや体調不良の可能性があります。食事やしつけの前に、動物病院で診てもらってください。
※本記事で紹介した研究は、DeNapoli JS et al., J Am Vet Med Assoc 2000;217(4):504-508/McCann D et al., The Lancet 2007;370:1560-1567/Kirchoff NS et al., PeerJ 2019;7:e6103 です。
※Lancet 2007は人の子どもを対象とした研究であり、犬や猫で同じ結果が確認されているわけではありません。
※本記事は健康食品の情報であり、病気の診断・治療や、行動の改善を保証するものではありません。吠えが続く場合や急に変わった場合は、動物病院や行動の専門家にご相談ください。